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THE談会
2015.12.27

理学療法士の本音

THE談会 vol.3

編集人:
田尻 博美[Rink!編集部](社会福祉学科 第2期卒)
撮 影:
池田 清太郎[STRIKE studio]

PTの仕事の領域って何処まで?

一言で「リハビリテーション」と言っても、その業務領域の概念は人それぞれ違うのが現状。求められる「業務」とプロとしての「仕事」の狭間で“これからの理学療法士”はどうあるべきか、今回も先生、在学生、卒業生が現場のリアルな本音と理想を熱く語ってくれました。


■今号のTHE談会人 PROFILE

加藤 浩さん

●大学院看護福祉学研究科健康支援科学専攻・専攻長

●看護福祉学部リハビリテーション学科理学療法専攻・教授専門分野は運動器

穴山 博基さん

(看護福祉学部リハビリテーション学科(1期)第9期卒)

●熊本大学医学部附属病院リハビリテーション科にて理学療法士として勤務。

前田 みなみさん

(看護福祉学部リハビリテーション学科 4年)

●卒業論文の研究では、昼夜問わず頑張りました!

原口 博史さん

(看護福祉学部リハビリテーション学科(1期)第9期卒)

●医療法人社団荒尾クリニック ふれあいクリニック介護センターふれあいにて理学療法士として勤務。本学大学院にも通いながら、臨床と研究の日々。


自分たちの職種をプロとして認められるために必要なこと

加藤:今、全国で理学療法士は約10万人いるんです。そして、養成校が260校くらいあってPT(理学療法士)の国家試験を受ける人が毎年約1万人います。当然数が増えると出て来るのが技術の差ですよね。だから、理学療法の質が下がってきているというのが私たちの中でも急務の課題です。自分たちの仕事が同じ医療職からどう評価されているのか、その危機感について現場で働く人に聞いてみたいなっていうのはありますね。

穴山:そうですね、特にうちは大学病院なので診療科も多いんです。整形外科があれば脳外科もあるし、新生児から胆癌まで見る事もあるので、結構病棟ごとに求められるニーズが違うのかなって思うのと同時に“日常生活に戻すという意味でのリハビリ”と“廃用予防の意味でのリハビリ”があるので、それぞれで評価は結構違うと感じます。

加藤:そこでね、僕の考えとしては急性期の理学療法に関しては自分たちでプログラムを立てたいわけ。例えば、パーキンソンの方であれば「薬を服薬して一番運動ができるこの時間にリハビリをした方が効果的である」というのが知識としてあるじゃない?そういう時に他職種側から見てPTがプロとして認められてないと、「リハビリでもしておいで」と見られていると思うんですよ。

穴山:うんうん、そうですね。

加藤:そういう「時間が空いてるからリハビリでもして時間を潰しておいで」という空気感が結構多いんだよね。

穴山:確かに多いですね。PTの役割を理解して貰えているか否かというのは看護師や医師個々人でかなり差があると思います。

加藤:でも、その為には結果を出すしかないんだよね。その辺についてみんなどう思う?

原口:んー…ただ、学校でもいろいろ教わりますけど、実際僕たちPT自身が“PTの仕事って何処までだろうな”というのが分かりにくくなってきているイメージはありますね。

プロとしての誇りを持つことの大切さ

加藤:確かにいろんな分野で活躍していいんだけど“自分たちのベースにあるのは医療技術なんだ”って言う誇りは絶対に持ってて欲しいんだよね。以前ある看護師から「様々な医療職者が集まる会議でPTの人に意見を求めたら“何にも無いです”って返された」って言われたことがあって…。一免許を持ったプロがスペシャリストの集団の中で言うべき事を言わないってことは、間違いなくその集団の中から“この人はいったい何が出来るんだ”って思われるよね。だからこそ常にプロとして自分の考えを持って行動する事が大事だと思うんですよ。

穴山:PTの誇りって大げさな言い方をするとその患者さんの今後の人生を自分の治療が左右する訳じゃないですか。それをきちんと“自覚”して患者さんと向き合っているのかという責任感がちょっと薄くなってきているかなというのは自分自身特に感じます。

加藤:そこだよね、原口君はどう思う?

原口:確かにPTは先生が言われた通り医療が専門という風に言われています。だけど、医師はそれぞれ専門の医療シーンがイメージしやすいですが、PTになってくると幅広くて、イメージがぼやけてる感覚があって…。結局そういう周囲のイメージから職域がどんどん広がっている様な気がします。

加藤:僕は職域が広いというのは良い事だと思うんだよね。ただ、PT自身“いったい自分は何を極めたいんだ”“何が専門なんだ”て言うものが無いと、外から見たら理学療法士って何してるのか分からないよね。そこがやっぱり一番の問題だと思うんだよ。

原口:本当にそう感じますね。僕の職場でいうと、大学病院と違って後期高齢者の方が8割くらい来ているところなので、リハビリと言えば“マッサージをする”であるとか、極端に言うと“車椅子を直してくれる”だとか“福祉用具を見てくれる”というような見られ方だったりして…。その見られ方も病院施設によっても違いますが、僕らがそういうイメージを変えていくことが大切だと思っています。

実際に話を聞いた4人をご紹介みなさんこれからも頑張ってくださいね!!

HIROSHI KATOH

加藤 浩さん

(大学院看護福祉学研究科健康支援科学専攻・専攻長)

HIROKI ANAYAMA

穴山 博基さん

(看護福祉学部リハビリテーション学科(1期)第9期卒)

MINAMI MAEDA

前田 みなみさん

(看護福祉学部リハビリテーション学科 4年)

HIROFUMI HARAGUCHI

原口 博史さん

(看護福祉学部リハビリテーション学科(1期)第9期卒)


恩師、同窓生、卒業生同士の繋がりを大事に

加藤:大学では『ネームストラップ』を付けていますが、これは僕の誇りなんです。リハビリテーション学科という誇りです。でも、今300人近く学生がいますけど、一度も後輩と話したこと無い学生っていっぱい居るんですよ。ましてや同じ学年でさえ4年間しゃべったこと無いとかね。

前田:たしかにそうですね・・・(笑)

加藤:いろんな学科があるけど全て“人を相手にする仕事”なので自分たちの身内にすら興味を持てない人が病院で患者さんの将来をどうにかなんて思えるわけがないと僕は思うわけ。だから僕は『コレ』を付けている人、少なくともリハ学科の人たちには絶対「挨拶して行きましょう!」と言っています。“人対人”というところを今から大事にしてほしいという想いがあるから。だから授業の時クドクド言うわけです、『コレ』を付けてって。(笑)

前田:たしかに私もうまくいかない時は周りの友達が助けてくれたこともありましたし、実習に出た時に先輩方の技術を盗むということも大切だなと感じました。社会人としてどうあるべきかという心構えも先輩方を見て学ぶことがたくさんあったので、横の繋がりもですけど特に縦の繋がりはすごく大切だなと感じました。実は、3年生のときの初めての実習で穴山さんにお世話になったんです。

穴山:はい。私が彼女の実習指導等をしてました(笑)

前田:これまでの話を聞いて正直に話すと…たしかに周りの友達も私自身も実習に出て自分の考え方が変わった部分がありました。これまで“PTのプロとしての誇りとは何か”と言われたら、ちょっと欠けていたかなって感じています。もともと私が理学療法士を知ったきっかけというのも、以前スポーツ中に怪我をしたことでPTの方に出会ったことからです。そのときはどういう仕事で何をしているのか、よく分からずに理学療法士になろうかなって感じで大学に入った部分が大きかったので…。だから私自身も実際に実習先で患者さんを目の前にするまではプロとしての意識なんてあまり考えてなかったです。

加藤:そういう意識の変化って実習中の指導者との出会いが大きいと思うんですよね。学生さん自身は患者さんを見てるつもりなんだけど、どうしてもその人よりも病気を見てるんですよ。私も多くの実習生を見てきましたけど、やっぱり実習中のインパクトが大きいんですよね。実習から帰ってきたら学生が偉そうに言うんですよ「加藤先生、やっぱり臨床はこうあるべきですよね。」って(笑)。だから僕は「それお前たちに300回くらい言ったよ?」って言い返すんです。

前田:そうですね。(笑)実際に私も実習で患者さんと接してみて“今まで私は何をやってきたんだ”ってすごく感じるようになりました。これまで本当に深く考えずに過ごしてきたなって。実際に適当な治療提供をしていたらこの方はどうなるんだろうって真剣に考えるようになって、プロとしての意識をちゃんと持って理学療法士にならなきゃいけないんだなって考えるようになりました。

加藤:もう一つすごく大事だと思うのが、母校に対する帰属心ですね。今の自分があるのは「あの先生や学友との出会いがあるからプロとして譲れないものがあるんだ!」という“核”になるところだよね。僕はそういうのがない人たちって日々の職場でも覇気がない気がするんだよね。母校に対して堂々と胸を張って“働くプロ同士の繋がり”がもっと増えてほしいと感じますね。

恩師、同窓生、卒業生同士の繋がりを大事に

原口:僕は今大学院2年目ですけど、もともとPTとして働いている時に「もっと自分に自信を持ちたい」って思っていたんです。そういう思いを加藤先生に相談させていただいた時にちょうど大学が院をつくるという話を聞いたので“ココ”しかないなと。巡り合わせというか『運命じゃないか』と思いながら院に進む事を決めたって感じですね。誰よりも先に加藤先生に相談しましたし。(笑)

加藤:タイミングってあるよね。(笑)ちょうど、この間学生が就活でとある職場を見に行ったんですね。行って見て「働くスタッフの笑顔が少ない…」だから受けるのはやめましたと言って戻ってきました。僕としてはそれはそれで良い選択だと思ったし、大事なのは“ドコに入りたいか”というより“ソコで自分はどういうことをやりたいのか”だと思うんだよね。難しいんだけど、その部分に価値を見出せていける人が増えればいいなぁってね。

原口:僕も実際働き始めて最初の1、2年目はすごく情熱があってちょっとでも「良くしよう」とか「頑張ろう」って気持ちがあって行動してましたが、4年目5年目になってくるとずっと同じなんですよ、日常のサイクルが。だから周りに求められることも「ちょっと気持ちいいマッサージして」とかに変わってきている。だから自分の中で危機感というか「これが将来10年後、20年後も続いていく」って考えるとすごく嫌な感じがしたんですね。

加藤:働き始めて2、3年すると皆どうしても毎日が繰り返すんだよね。慣れてきてるから“決まったことやればいいだけ”なので。原口君なんかはソコに満足出来ないから大学院という新しい次の世界に飛び込んできたんですよね。

原口:そうですね。あと先生が『運動器の専門』ということもありました。僕はもともと歩行に関して、特に足に注目していたんです。筋力の作り方とか力の出し方の変化とか筋肉から見ていくという所で今研究しています。

加藤:もともと業務と仕事は違うってことだね。日常のマンネリ化した仕事は「業務」なんですよ。業務はやって当たり前なんです。僕からすると研究っていうのは「仕事」。原口君が院で取り組んでいるのも「仕事」として、日々の臨床をクリエイティブにしていくことが大事だよね。今の自分の限界を超えていくっていうエネルギーですから。

原口:はい。僕自身もっと変わりたいという気持ちがありますし、PTとしての「仕事」と大学院での「仕事」と両立していますけど、全然苦にならないです。

加藤:そうそう、クリエイティブに「仕事」ができている人は「仕事」に誇りを持てるんだよね。誇りがあるから責任が生まれてくるし、責任を持ってる人は輝いて見えるし夢を語るんだよね。実はこれがリハ学科のアドミッションポリシーなんだよね。『夢を語れる人、自分の仕事に責任を持てる人、人の話を聞く耳を持てる人』そういう人に大学に入ってきてほしいっていうね。まさに今自分がプロとして仕事ができているのかと考える事が出来る人、そういう人はやっぱり伸びていくし、本当に社会から必要とされる。

前田:私も具体的な分野ではまだ悩んでるんですが、「どういう理学療法士になりたいか」という点ではいつも考えますね。もっと研究をして“まだ解明されていないことを解明する”ことでより良い治療を提供できるんじゃないかとも考えているんです。ですから毎日“自分自身の質を磨く”ことが大切だと思っていますし、私の研究が患者さんに還元できる様な理学療法士になりたいなと考えてます。

組織人としての能力を高め自立した集団へ

加藤:どの職種もそうですが、PTも一人で仕事はできないからいろんな専門職と仕事しないといけない。だから組織人として自立していることが腕のいいPTの大前提なんですよ。立派な組織人となるためには、やっぱりコミュニケーション能力は絶対いる。基本中の基本で「挨拶ができること」「ごめんなさいと言えること」「時間を守れること」どれもすごく当たり前のことなんです。例えば授業でもこっちが○○君って呼んでるのにハイって言えない人が組織として動けるだろうか、組織人として動けない人が一流のプロとして成り立つだろうかって考えますね。

穴山:やぁ、本当に胸に突き刺さる。(笑) やっぱり専門職という前に“人対人”という事を忘れちゃいけないですよね。うん!

加藤:そうそう、それがやっぱり人と向き合うっていうことだよ。僕は理学療法士の“士”という字が大好きなんです。武士の“士”、つまり侍です。一人ひとりが「一専門職として誇りを持って、夢を持って、輝きながらやっていく」こと、要は自立です。ただの集団ではなく個々人が自立した集団ってすごく強いと思うんです。10万人20万人の理学療法士がそういう集団になれば当然社会から今以上に必要とされる。すると次の若い世代たちが「この集団かっこいいな」「俺ここで自分の人生ぶつけてみようかな」と思ってもらえる。そういう歯車が回るようになればいいなと思いますね。


みなさん、今回は貴重な話をありがとうございました。

次号(2016年 月発刊予定)の座談会は
『鍼灸スポーツ学分野の今』を熱く語っていただきます。
どうぞご期待ください。

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